近視眼現代

 
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 先日、「クローズアップ現代」という番組を観ていて、笑ってしまった。いつも、限られた時間を使って、現代という巨大な化け物の実体を中途半端に明らかにしてくれることに定評のある番組であるが、今回は特に面白かった。
 番組では、そういった団体に所属する人たちに対して、断固たる態度を貫くことを市民に求めていた。そういったことの積み重ねが、暴力団排除条例を有効に機能させてゆくらしい。
 でも、条例を有効に機能させるよりも前に、とても難しい問題を解かなければならないと思う。それは、そういった団体に所属している人や関係者をどうやって識別するかという問題だ。
 上半身裸で、立派なartを剥き出しにしながら訪問してくれたならば、すぐにその筋の人だということが判るけれど、顔が怖いだけの人や口調がキツいだけの人というのも世の中にはいるわけだし、足立ナンバーのクラウンに乗っているからといって、警察に通報するわけにもいかないだろう。加えて、自動車のリアウィンドやサイドウィンドにスモークを貼っているからといって、その人が怖い人だとは限らない。
 つまり、詐欺師っぽい詐欺師、泥棒っぽい泥棒、シリアルキラーっぽいシリアルキラー、悪い人が全て、こんな感じの人たちばかりならば、確かに怖いことは怖いけれど、防犯対策は、今よりずっと簡単になることだろう。だけど、現実には、優秀な悪人ほど、普通の人と見分けがつかないように偽装しているはずだし、これは暴力団やその関係者たちにも当てはまるだろう。それに、関係者といっても、その中には、無意識の関係者もいれば(知らずに関連会社に就職した人とか)、あまりに関係が間接的過ぎて自覚症状のない関係者だっているだろう。そういった人たちへの対処は、かなり難しいはずだ。
 「暴力団の撲滅」という言葉が、番組中で使われていたけれど、彼らの仕事の歴史は古い。つまり、歴史上、撲滅されたことはないということだ。今よりも人の命が軽かった江戸時代においても、撲滅はされなかった。鬼の平蔵こと長谷川平蔵にだって出来なかったのだ(彼は、撲滅なんてしようとは考えなかっただろうけれど・・・)。彼らの撲滅は、人の命の重い現代においてさらに難しくなっていると思うのは、僕だけだろうか?
 それと、これは案外深刻な問題だと思っているんだけど、社会の暗部を解消することは、社会の明るい部分をも消すことになるような気がする。悪い人や恐い事は、少なければ少ないほど好ましいし、出来れば無くなって欲しいとは思うけど、完璧超人でもない限り、誰しも悪い部分や恐い部分や弱い部分を持っているはずで、その良くない部分が、ある日を境に社会によって排除の対象ということにされてしまったとしたら、これはこれで恐い事だ。今回の条例は、そんなに恐れるようなものではないようだけど、昨今の都の動きには、清潔な社会というよりも潔癖な社会を求めているような、ある種の恐さを感じる。それはともかく、誰が猫に鈴をつけるのか?という古(いにしえ)からの難問は、まだ解決されていない。