金色の闇


ネットには闇があるらしい。テレビゲームにも、テレビにも、漫画や映像作品にも、闇があるらしいという噂がある。


磨製石器が普及し始めた頃には、磨製石器の闇なるものがあったのかもしれない。打製石器を使っていた人たちは、磨製石器を使うキレ易い若者というか刃物というか鏃(ヤジリ)に、ちょっとだけビクついていたのだろうか。
文字が普及し始めた頃には、文字の闇が、パピルスが普及し始めた頃には、パピルスの闇が、あったのかもしれない。青銅器の闇、馬具の闇、鉄器の闇、宗教の闇、様々な闇が、様々な民族や世代によって、危険視されてきたのかもしれない。


闇が宿るのは、物に限った話ではなく(そもそもネットは物ではないけど)、農村や近代文明のようなものにまで宿るものらしい。そういえば、闇金融、闇献金、企業の闇、ダークヒーロー、暗黒時代のような言葉を聞いたこともある。どうやら、闇は、大抵の事物に憑依するものであるらしい。人の心には闇がある、女は魔物、なんてことを言う人もいるのだから、こうなると、人にとって、闇は、日常の一部ですらある。


これだけのたくさんの闇に囲まれながら、それでも人類の大多数は平凡な人生をまっとうしてきたのだから、闇は、そもそも問題ではないとも考えられる。
人類が、いつ頃から火を使い始めたのかは知らないけれど、また、火を使い始めたから人類になったのか、人類だから火を使うようになったのかも分からないけれど、どうやら、光よりも闇のほうが先輩であるらしいことは、なんとなく察しがつく。闇の中で、初めて人類(仮)が光を手に入れた時、光の闇を見出した者は、彼らの中に果たしていたのだろうか、いなかったのだろうか。


【本】
ヨコハマ買い出し紀行』第6巻(芦奈野ひとし著、講談社
『自分ということ』(木村敏著、ちくま学芸文庫
『日曜日に読む「荘子」』(山田史生著、ちくま新書
【DVD】
BONES season5-1」
オリエント急行殺人事件スペシャル・コレクターズ・エディション」(監督:シドニー・ルメット、出演:アルバート・フィニーほか)
ナイル殺人事件」(監督:ジョン・ギラーミン、出演:ピーター・ユスティノフ
「ゲームセンターCX 11.0」:「ロックマン」&「ワギャンランド」。