「宵」の明星

 一部で話題の「凌○」ゲームに関するニュースは、情報の真偽や規制実施の正否を問う以前に、考えるべき論点を提供してくれている。
 文化の違いが作用している国際問題は少なくないけれど(犬食や捕鯨問題など)、文化の中でもエロスに関する問題は、大抵の文化圏ではエロス=タブーという雰囲気があるために(この雰囲気だけは、かなりの文化圏で共通しているのだから面白い)、そもそも議論の対象になることが少ないようだ。
 今回の事件は、国内でならばギリギリ通用する(あるいは、みんなが空気を読んでスルーしてきた)価値観が、ネットに乗って国境を越えてしまったことに端を発するらしいけれど、こんなふうに、情報(価値観や思想を含む)が、人間の手を離れて世界中を勝手に飛び回っているかのように見える現代では、ある日、突然、異質な価値観に直面してビックリ!?という事態が発生し易いのだろう。渦中のゲームは、日本国内においても堂々と街中でパッケージを見せて歩ける類の商品ではないのだから(別に、イリュー○ョンの偉大さを否定してはいませんよ)、それを初めて見てしまった海外のお偉いさんが驚くのも無理はない。
 今回のような出来事を機に、それぞれの国の文化(エロスも含む)の異質さについて、真摯に考える人が増えれば良いと思う。相手を打ち負かしたり、一方的に否定したりするような議論ではなく、それぞれの国の歴史を踏まえた、大局的な(ヒストリカルな)視野に立った文化研究が進められるようになれば素晴らしい。どんな問題でもそうだけど、ヒステリックになると解決するものも解決できなくなってしまう。