「愛はjewelより」

 今回のタイトルは、森川美穂の歌う名曲「ブルー・ウォーター」の一節。直後に「すべてを輝かす」と続く。この歌が「ふしぎの海のナディア」専用に作られたものであると仮定して話を進めたい。
 この「jewel」を単に宝石と理解した場合、この歌の主旨は、愛は宝石よりも素晴らしい!という「金色夜叉」以来のありふれたものになってしまう。別にそういうふうに理解することが悪いわけじゃないけど、それでは何だか寂しすぎるじゃないか。
 というわけで、この「jewel」を「ふしぎの海のナディア」という作品や作品の主旨とリンクさせて理解してみることにしたい。観たことのある人なら誰でもわかるように、「jewel」は「ブルーウォーター」のことだ。作中での「ブルーウォーター」は、その正体や仕組みを誰も正確には知らず、得体の知れないものとして終盤まで存在し続ける。だから、ブルー・ウォーターとは、科学信仰のもたらした遺産ということができるかもしれない。つまり、「人間の、人間による、人間のための」ものであるはずの科学が、いつのまにか「科学の、科学による、科学のための」人間という逆転現象を引き起こしてしまい、そのような世界観の象徴としてブルー・ウォーターやノーチラス号ガーゴイルという組織がある*1
 「jewel」という歌詞を「科学」と言い換えることで、それなりに正しい解釈が成立する。けれども、「jewel」という歌詞に込められたメッセージは、「科学」の一言では不十分だろう。科学は、人間が愛を以って使いこなしていかなくてはならないものなのであって、信仰の対象ではない。というようなメッセージがあの歌詞には込められているような気がするのだが、大げさかな?
 結論:「ブルー・ウォーター」は、作品のテーマと見事にリンクしたまれに見る名アニソンである!ってことで。

*1:ジャン少年の成長過程は、科学への信仰→科学への不信→科学よりも愛→科学は人間の心がけ次第、というものだったと思う。ここにも、作品のテーマが表されているんじゃないかな。