朝日テレビ

ドラマ『相棒』が面白い。もともとは、寺脇康文が好きで観ていたのだけど、水谷豊も学校の先生役の頃とは違った渋い演技だったのが熱中度を加速した。しかし、すべての回がおもしろいわけではない。妙に教訓じみた話が多い傾向にあるのは確かだ。僕としてはシャーロックホームズよろしく、社会悪とか社会善とか、そういうものと切り離した視点で描かれた話を観たい。老人から子供までをターゲットにしているそうなので、仕方がないのだろうけど。
 話は変わるけど、愛読している『よつばと!』が「癒し系」漫画だと思われていたことにショックを受けた。読んでもらえれば、一種の寂寥感のようなものが作品全体を貫いていることに気づいてもらえるはず。「よつばと」の世界観は、全体的にアットホームだ。和気藹々とした雰囲気が読者にも伝わってくる。けれども、そのアットホームな雰囲気に反して、主人公の「よつば」は拾われた子。『フランダースの犬』のような雰囲気の作品ならば、このような親なし子が登場しても何も違和感はない。しかし、「よつばと」の場合、アットホームな雰囲気の中で、「よつば」の設定は浮いている。柔らかくて甘そうな大福を食べたら、実は青酸カリが混入してました、みたいなものだ。
 もしも、「癒し系」な作品を描こうと意図していたなら、こんな設定の主人公を登場させるのは得策ではない。常識的に考えれば、「よつば」の置かれた環境は、幼児や児童が歪むのには十分な条件が整っている。今の段階では、あずま先生の意図は謎のままだ。
 「よつば」が、お隣の奥さんのことを「母ちゃん」と屈託のない笑顔で呼ぶたびに、何ともいえない寂しさを感じる。

【今週の読書】
バカの壁』(養老孟司著、新潮新書):今さらだけど、100円だったので購入して読んだ。400万部超えの怪物ベストセラーなわけだが、のべ400万人もの人たちは、この本を理解できたのだろうか?別に挑発しているのではない。文体のやわらかさや文章の簡潔さに騙されると、真意を把握するのが不可能になる。この本の核となるテーマは、プラトン著の『饗宴』や『ソクラテスの弁明』に近い。つまり、それだけ厄介ということ。養老という人の本は、いつも二重底になっている。細心の注意を払わないと、本当の底に気がつけない。
刀語』(西尾維新著、講談社BOX):とうとう最終巻を読み終えた。月刊の小説の割りに充実した内容だったと思う。ライトノベルとして読みたい一品。
【今週の映画】
ランボー』:原題は「First Blood」。観終わって、まず思ったのは「お前ら少し冷静になって話し合えよ!」というものだった。保安官もランボーもあまりに口下手。当時のアメリカ人たちは、この人たちの口下手さ加減に違和感を覚えなかったのだろうか?思春期(僕にはなかったけど)の子供の身内への態度以上にぶっきらぼうだった。作品全体としては、思っていたよりもずっと良かった。しかも、次回作の存在を予感させる作りにも好感が持てた。
らき☆すた』(DVD第一巻):『ぱにぽに』『らきすた』と観て、『あずまんが大王』の型を隠すことなく大胆に継承しているように感じたのだけど、どうなのだろう?これだけあからさまなのだから、これも一種のギャグなのかな。実写でもアニメでも、この手の黄表紙作品(僕が勝手に呼んでる)が増えてきた。主観では、『時効警察』もここに分類される。しかも、日本はこの種のものを作るのが上手だ。江戸時代に培った能力なのかもしれない。