夢の中でステマった、ような・・・

 物やサービスを売るのは、キレイゴトではない。そもそも物やサービスを人が売るのは、生きるためだったり、儲けるためだったりする。世のため人のために商売をする人もいるのだろうけれど、それは応用編のお話であって、一部の才能にも運にも恵まれた人にのみ可能な商売だ。
 万人にとって有益な物品やサービスを必要とされる質と量だけ、適正な価格で提供しようとすると、おそらく、その商売は長いこと続けられないだろう。生きるために、儲けるために、できるだけ長く商売を続けようとすれば、灰色の商売に手を染めないわけにはいかないのではないか。だから僕は、企業の社会的責任とか企業倫理とかいう考え方に対して、期待はしていない。
 これは、企業=悪だとか、商売=悪だとかいうような、幼稚な妄想によるものではない。どんなに素晴らしい商品(サービス含む)でも、それが売れるかどうかは、売る人の才能や努力だけでは決まらないし、そうであれば、なるべく確実に売り続けるためには、違法ではないが正しくはないような手段を使うことが避けられないだろうと思うからだ。
 違法な商売を擁護する気持ちなんてさらさらないけれど、買う側は、そういった商売の業のようなものを頭の片隅に置いておけば、彼らの振る舞いに激昂したり、一喜一憂したりすることも減るかもしれない。商売人=アッサラーム商人、あるいは、商売人=QBという偏見を持って生きていれば、サクラやステマにもそれほど腹は立たないし、それほど話題にもならなかったのだろう。


【本】
『13歳からの反社会学』(パオロ・マッツァリーノ著、角川書店)
『「コミュニケーション能力がない」と悩むまえに』(貴戸理恵著、岩波ブックレット)