武道バカ一直線 Part.1

以前も柔道必修化について書いたような気がする。内容が重複していても知らないフリをして下さい。


 24年度から中学校での実施が始まるとのことなので、もう一度、柔道必修化についてあれこれ考えてみた。必修化に当たって、最も危惧されているのが危険性の高さだ。僕が通っていた道場では、約2時間強の練習時間の内、約1時間強を柔軟体操や受身の練習に割いていた。そして、後半の1時間足らずで、打ち込みや乱取り稽古を行っていた。時間配分で見ても、その内容の濃さで見ても、重視されていたのは前半の基礎であって、後半は、小学生たちを飽きさせないためのオマケみたいなものだった。
 これは僕の憶測だけど、柔軟体操や受身が重視されていたのは、初段ですらなく、身体も未成熟な子供たちにとって、何より重要なのは、柔道を習うに耐える身体の柔軟さでありタフネスだからなのだろう。球技や陸上競技だって、油断すれば死傷するけれど、武道は、そもそも他人を死傷させるための(嘘)行為なのだから、その他の運動競技以上に、肉体の強度や柔軟性が重要になってくると思う。
 学校の授業で柔道を教えることになれば、45分だか50分だかの非常に短い時間を使って行うことになる。仮に、2時限分ぶっ通しで使ったとしても、90分程度だ。教室移動の時間を考慮すれば、実質の授業時間はもっと少ない。
 したがって、道場で行われているようなことをこの時間中に実行しようとすれば、授業では、柔軟体操しか出来ない。だからといって、教育者側の準備した授業予定を完遂するために、無理矢理柔道を行おうとすれば、武道向きの身体が整っていない状態で技を掛け合うことになりかねず、高い確率で負傷者が(下手をすれば死者さえ)出てしまうだろう。
 さらに、スプリングを豊富に使った武道場なんて、全ての中学校に設置されているわけではないだろう。仮に、普段はバスケ部やバレー部が使っているような体育館の床の上に畳を敷いて、そこで柔道の授業が行われるとしたら、死傷者の発生率はグッと高まる。というか、そんな場所でやらされたら、有段者同士の試合でも怪我人が出てしまいそうだ。


【本】
『反社会学の不埒な研究報告』(パオロ・マッツァリーノ著、二見書房)