キジは鳴いたが撃たれない

 2週間ほど前、父親が、山で拾ったと言って卵を一つ僕に見せた。道端に一つだけポツンと落ちていたらしい。鶏の卵よりもひとまわり小さいその卵は、父親の言葉を信じるのならキジのものらしい。試しに我が家の鶏にその卵を温めさせることになった。
 そして昨日の昼、見事キジのヒナが誕生した。母はその姿を目にしたらしいが、僕はまだ見ていない。見ようとして、鶏の巣箱に顔を近づけたのだが、どうやら継母鶏のお尻の後ろに隠れてしまっているようで、見ることができなかったのだ。それでも、ピヨピヨという声だけは聴くことができた。
 ちなみにこのヒナ、性別も分からなければ、名前もまだつけていない。「アトム」という名前は、不謹慎だろうか?はぐれ卵というアトミックな過去を背負っているという意味で、ピッタリだと思うのだが。
 今問題となっているのは、エサだ。一体キジのヒナは何を食べるのか?それとも、継母に育児を丸投げしてしまえば、エサ問題を含めたあらゆることが万事上手くゆくものなのか?鶏とキジは何となく似ているから、それでも何とかなるような気もする。兎にも角にも、せっかくピヨピヨ産まれたのだから、天寿をまっとうして欲しい。