上州摩滅

 過去に何度か朝型人間に生まれ変わるべく、がんばったことがあったけど、結局無理だった。日本睡眠学会によるサマータイム制批判に見られるように、やっぱり向き不向きがあるようだ。
 だからといって、僕が朝型人間になれなかったのが、先天的な要因なのか否かはわからない。単に、僕の怠慢のせいだったかもしれないし、あるいは、そもそも朝型人間になる必要が無かったからなのかもしれない。
 節電の大義が、労基法や生体リズムを切り裂こうとしていて怖い。ただ、労基法の方は日頃からズタボロなので、今さら断ち切られたとしてもダメージは少ないだろう。これは悲劇だ。
 節電の剣の切れ味はなかなか鋭いので、個人の権利も生活も簡単に切断されてしまう。このような状況を全体主義と呼んでも支障はないと思うけど、そういった類の批判の声は、あまり聞こえてこない。案外、みんな、この主義が身心に馴染むのかもしれない。みんなに馴染むのであれば、その方がGNH(国民総幸福)が高いことにもなるのだろう。


【本】
つむじ風食堂の夜』(吉田篤弘著、ちくま文庫)
『オタク・イン・USA』(パトリック・マシアス著、町山智浩編訳、大田出版)
『マンガ伝』(村上知彦ほか著、平凡社)