「意」識と性別

 「ジェンダー」という言葉は、よく耳にはするけれど興味の湧かない分野で使われる言葉だったので、今日まで用語の意味を調べようと思ったことはなかった。性に関する問題を追究することに何か重要な意味があるとも思えなかったから、というのもある。
 だけど、用語の意味程度ならば調べればすぐにわかることなので、図書館で目的に適う本を偶然見つけたこともあって、借りて読んでみた。放送大学の教材用に作られたテキストで、『ジェンダー社会学』(江原由美子/山田昌弘著、放送大学出版会)というものだ。
 「セックス」という用語が、女性や男性の身体と強く結合したものであるのに対して、「ジェンダー」という用語は、女や男といった特定の性を意味するのではなく、性一般を指し示し、しかも、女や男の身体的特徴との結びつきよりも、「私」が自分をどのような性の持ち主として認識しているのか(自己意識)、社会は「私」の性についてどのように認識しているのか(社会の意識)、という意識との結びつきの強い用語ということになるようだ。
 「セックス」という用語を使う限り、男か女かという二元論的な話しか出来ないのに対して、「ジェンダー」は、人間の身体的特徴からは切り離されているために、男や女以外の性(ゲイなど)についても扱うことができるという特徴をもっている。性的な意味での肉体は、二種類しかないけれど、人間は、その二種類しかないものに様々な意味を付着させる。したがって、肉体から派生する事象よりも社会によって派生する事象の方に関心を向ける人たちにとっては、使い勝手の良い用語ということになるだろう。
 以上、お勉強終わり。


 【今日の読書】
孤独のグルメ【新装版】』(久住昌之原作、谷口ジロー作画、扶桑社):入院したくなった。
STEEL BALL RUN』第18巻(荒木飛呂彦集英社)