「百」人一首

 小学生の頃の記憶力の良さには驚く。英語必修化には嫌な予感しかしないけれど、英語や日本語の語彙数をあの頃に出来るだけ多く蓄積しておいたなら、その後の人生は大分楽だったろうと思う。
 さて、その貴重な時期に、某県民は、極めてローカルなカルタに興じることによって大量の時間を浪費する。他県から転校してきた僕もその害を避けることはできなかった。家庭でも学校でも(比重は家庭の方が大きい)、そのカルタ遊びが奨励され、気づいた頃にはほぼ完璧に暗記してしまっている。こうして、某県民の郷土愛が育まれるのである。今でも、他県民との勝負であれば負ける気がしない。
 あの頃に、せめて百人一首に興じる機会を選択する自由が与えられていたならば、古典を読むための素養やら何やらが身についたに違いない。そう思うと、後悔後悔である。
 某県は、小規模〜中規模の古墳が多いことでも知られている。つまり、古代のある時期においては、かなりの勢力を誇っていたということだ。関東地方以北は、大和から見れば、いわゆる前人未到の地だったはずだ。百人一首を奨励しないその姿勢の背景には、反大和政権の思想でも隠されているのかもしれない(嘘)。

【今日の読書】
『夜明けのブランデー』(池波正太郎、文春文庫)
『「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか』(小池滋新潮文庫):芥川の「蜜柑」についての検証が行われていたので買ってしまった。他にも、漱石、花袋、宮沢賢治荷風などの作品が、鉄道を軸に分析されている。「鉄」分の高い人なら、僕よりも楽しんで読めるはず。
【今日の映画】
世界最速のインディアン」:あんまり評判にはならなかったみたいだけど、良い映画だった。