「う」ろんなすうち

 ベーシック・インカムという思想というか構想がある。全ての人へ一律に現金を与えるというもの。額は論者によって様々で、働かなくとも生活可能な額を支給せよ!という人もいれば、働かなければ生活できないギリギリの額を支給すべし!という人もいて、政治的な実行力をもつだけの勢力形成には至っていないようだ。
 働かなくとも基本的な所得が保障されている、つまり、存在するだけで「生きていて良い」という(現時点では)夢のような(と思われている)社会は、基本的人権の尊重という理念を忠実に体現した社会と言えるかもしれない。
 それはともかくとして、日本で平均的な生活を維持するためにはどれだけの収入が必要なのか気になったので、ネットで以ってチョチョイのチョイと調べてみた。

条件:30代夫婦・子供なし・家賃7-8万程度のマンション住まい・自動車1-2台所有・適度に外食し嗜好品も食す・一般的な保険に加入・レジャーや交友あり
中流階級のなかの中流階級ってことかな。
以上の条件を維持するのに必要な年間生活費は、400万円前後ということになりそうだ。(夫婦の収入を合計して)月収30万円は必要だろう。もちろん、大きな病気や事故は想定していない。

 ベーシック・インカムは、全ての国民に基本的な収入を保障するものなので、1人あたり15万円の月収が保障された場合には、たとい労働に従事しなくとも、上記のような、貧困とは程遠い生活が全ての人にとって可能ということになる。子供が生まれた場合には、子供1人あたりに対しても月収15万円が保障されるので(ベーシック・インカムの支給開始時期については見解がわかれるようだ)、育児や教育に関する負担は夫婦の生活を脅かす存在にはなり難い。

以上のことは、ゲッツ・W・ヴェルナー著『ベーシック・インカム』(渡辺一男訳/小沢修司解題、現代書館)を読むことで生み出された僕の妄想を、ネットを根拠にした曖昧な見解とミックスさせて完成した事故米焼酎のようなものなので、注意して読んでください。

【今週の読書】
『データブック貧困』(西川潤著、岩波ブックレット潤・30)