【今週の読書】で何回か紹介した本に『QRD』という推理小説のシリーズがある。寮の知人に紹介したところ、見事にハマッてしまった様子。
 おそらく、本格派の人たちは『QED』のようなスタイルの小説を嫌うかもしれない。どんなスタイルかと言えば、歴史や民俗学に関する薀蓄が本の7割強を占め、その薀蓄を語るついでに事件が解決する、というもの。巻末には、本格的な民俗学歴史学の本が参考文献として多数挙げられていて、推理小説を読んでいるのか、民俗学とか歴史学の本を読んでいるのかわからなくなる程だ。だから、犯人探しの妙味を求めている人にとっては、物足りないかもしれない。
 そういうわけで、図書館で研究(本業)のための文献を探しているときも、ついつい「鬼」とか「妖怪」というワードを目で追ってしまう有様。
 別に幻想としての「鬼」とか「妖怪」に関心があるわけではない。民俗学における「鬼」とか「妖怪」が面白いのは、それらが現実の人間を指し示しているという側面を持っているからだ。最初、僕は、「鬼」や「妖怪」を現実の人間とイコールで結ぶことを、小説の中だけの世迷言だと思っていたのだけれど、著名な歴史家や民俗学の研究者たちの本を読むと、どうやら本当のことだったらしいということがわかってきた。
 ほとんどの場合、「鬼」や「妖怪」と呼ばれたのは、被差別民や支配勢力に敗退した人々のことなのだそうだ。最近、中世の日本やヨーロッパの歴史を勉強する必要が出てきたのだけれど、このような視点は、中世を勉強する上でも重要だと思う。ただし、この歴史的事実が経済学の勉強にどのように結びつくかはわからないけれど。